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サプライチェーンのリスク管理に
本当に効果的な3つの戦略的要素

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サプライチェーンのリスク管理に 本当に効果的な3つの戦略的要素

予想外の事態や自然災害を重点としたリスク管理計画では、意図する効果は得られません。

はじめに

リスク管理と聞いて何を連想しますか?まず思いつくのは、自然災害や政情不安でしょう。確かにこのような予想外の事態や「不可抗力」は、サプライチェーンに大きな混乱を招く恐れがあり、全体的なリスク管理戦略に盛り込む必要があります。しかしながら、予想外の事態だけに焦点を合わせたリスク管理計画では、企業の競争力に対する最も重大なリスクを見落とすことになります。

市況の変化に最も効果的かつ迅速に対応できる企業は、サプライチェーンのモデル化テクノロジーを活用し、エンドツーエンドの現行モデルを作成しています。このテクノロジーでは、想定内の変化や予想外の事態が生じた際に、サプライチェーンを再設計、最適化し直すことができます。

本当のリスクとは?

ある企業にとってはリスクでも、別の企業にとってはリスクではない、また同じ企業内でも、ある製品ラインにとっての重大リスクが、別の製品ラインでは重大リスクとはならないことがあります。例えば、電機メーカーが競争力を維持するためには、生活家電ではコスト面、マージンの高い新製品ではサービスや品揃えといった面での優位性が求められるでしょう。また、マクロ的な経済情勢が変わり、消費者の可処分所得が減少した場合には、 両方の製品の戦略を転換する可能性もあります。

企業が行うあらゆる意思決定には、それぞれにリスクを内在しています。洪水や火災といった予想外の事態は、ほとんどの企業のサプライチェーンにとって最大リスクとはなりません。むしろ日々のビジネスにおいて、競合他社に対抗できないことこそがリスクとなります。

他社は、

  •  より優れたサービスや、一貫した納期厳守の商品配送を実施していますか?
  •  より低コストでエンドツーエンドのサプライチェーンを運用していますか?
  •  マージンを最大化するため、顧客や商品をセグメント化していますか?
  •  緊急対策プランで主要市場の変数の感度を見極めていますか?

しかしながら、「競合他社より優れたパフォーマンス」の定義は、市況、製品の種類、地域、そして経済情勢により変わることがあり、それが競争力の維持を難しくしています。さて、あなたの会社は競争力を維持し、予想外の事態に素早く対応する能力と見識をお持ちですか?

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本当のリスクに備えている企業は現実のサプライチェーンモデルを活用

世界はかつてなく複雑化して不安定な状況が続き、変化も急速です。そのため、サプライチェーンの設計はビジネスにおいて不可欠な機能となっています。先見的な企業は、サプライチェーンを継続的に見直し、改善しています。モデル化テクノロジーを使い、様々な市況や想定においてサプライチェーンがどう機能するかを検討し、コスト、サービス、リスクの二律背反を分析しています。そして、現実的なエンドツーエンドのデジタルモデルを維持し、市況の変化に応じてサプライチェーンを再設計、最適化し直し、主要な想定の感度を検証しています。こうした企業が、サプライチェーン運用の技術的な設計を通してビジネスリスクを軽減し、競合他社に対し大きな優位性を維持できるのです。

サプライチェーンのリスクを管理する本当に効果的な3つの戦略的要素

サプライチェーンの現行モデルを作成することで、サプライチェーンのリスクを軽減する3つの重要な要素が実施可能となります。

  1.  可視化 : 現行のサプライチェーンの構成とモノの流れは?
  2.  シナリオ分析 : これを試したらどうなる? コストやサービスへの影響は?
  3.  迅速な対応 : 予想外の事態にどう対応すべき?

サプライチェーンのリスク分析プラットフォームには、ネットワーク最適化、在庫最適化、モノの流れの最適化、シミュレーション、経路最適化など様々なモデル化のテクニックが必要です。さらに、企業のERP環境にはない、代替サプライチェーンのベンチマークデータやリスク指標も必須です。

将来のネットワーク運用を効果的に計画するためには、まず現状を十分に可視化、理解する必要があります。リスク軽減の最善の形は、企業の最大リスクを反映したシナリオに対応できる代替モデルを考慮して、サプライチェーンの見直しを継続的に行うことです。では、この3つの戦略要素が、起こり得る変化や予想外の事態に備える際、どう役立つかを説明しましょう。

1. 可視化: 現行のサプライチェーンの構成とモノの流れは?

現状を目に見える形にすることは、サプライチェーンのリスク管理の基本的な第一歩です。これにより、「現行のサプライチェーンの構成とモノの流れは?」という疑問が解決します。

サプライチェーンのモデル化のテクノロジーでは、複数のデータソースから抽出されたユーザーのデータを利用し、既存ネットワークの基準モデルを作成できます。現行モデルを構築できれば、地図、チャート、グラフなど様々な形式でのモデルの表示が可能です。また、インタラクティブなダッシュボードを作成し、具体的な疑問、モデルにおける問題や外れ値の洗い出しに活用することができます。

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モデル化のテクノロジーを活用して、サプライチェーンへのリスク影響度を把握した家電メーカー

ある家電メーカーは、サプライチェーンに混乱が生じた場合の影響度を十分に把握したいと考えました。そのため、まず全ての製品の供給元の場所、生産、配送を反映したサプライチェーンのエンドツーエンドのモデルを作成しました。そして、全ての拠点をジオコード化してモノの流れを可視化し、1つの調達先に頼っている部品を特定しました。また、サプライチェーンの地理的リスク要因(物流インフラ指数、汚職、政治の安定性、過去の自然災害、原発施設からの距離など)のレイヤーを追加しました。こうした作業によりリスク重点地域を可視化し、当面のリスク軽減戦略を策定できました。

サプライチェーンの可視化で非効率を特定し、数百万ドルのコスト削減を実現した化学会社

ある大手化学会社は、ただ単にサプライチェーンの構造とモノの流れを可視化しただけで、製品の流れにおける問題を特定できました。この会社はまず、地理的な各市場について、数量に基づき25の主要品目を特定した上で、各市場を数量とコストで順位付けしました。その結果、おかしなことが分かりました。フィリピンはコストでは上から3番目ですが、数量では順位が大きく下がります。なぜでしょうか?調べてみたところ、その会社では数年前からフィリピンへの製品輸送には航空便を使用することになっており、日用品の乳化剤であっても空輸されていたのです。 フィリピンへの輸送を低コストの手段に変更したことにより、その会社は数百万ドルのコスト削減を実現し、マージン低下のリスクを軽減できました。

 

2. シナリオ分析: これを試したら? これが起きたら?

サプライチェーンの現状を反映したデジタルモデルを構築すれば、その時点での最大リスクに基づき様々なシナリオについて最適化を行えます。このシナリオ分析が、リスク管理戦略の重要な要素です。

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戦略を策定する際、需要、コスト、リードタイム、有用性といった要素について想定を立てます。モデル化のテクノロジーを使えば、こうした想定に基づきコスト面で最適なサプライチェーンの設計を簡単に行うことができます。では、想定が変わった場合はどうでしょう。それでもコスト的に最適な設計が正しい答えなのでしょう?サプライチェーンのデジタルモデルが構築されていれば、企業にとって最大リスクとなり得る要因に基づき想定の感度を検証できます。例えば、需要想定が5%、10%、あるいは15%外れた場合、現行のサプライチェーン設計が最適であるかを確認できます。

変数を調整し、その効果を検証することで、シナリオの感度を設定できます。コスト面での最適の状況を見い出すだけでなく、どのような条件でその最適性が崩れるかも把握できます。ある状況の下で何が生じるかを事前に見極め、リスクを最小限に抑えるための最善策を立てられるのです。感度分析により、何かが生じてから現実の世界で想定を検証するのではなく、デジタル環境で事前に判断ができるようになります。以下の例は、感度テストを使って、その時点での最大リスクを反映したシナリオへの対応を策定できるケースです。

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在庫切れや売上損失を抑えつつ、総コストを削減した大手小売チェーン

ある大手小売チェーンでは、サプライチェーンの現行モデルは既に構築済みであったため、それに基づき、特定の市場への商品の流れを評価するモデルを作成しました。その会社では、商品の65%以上を米国外から調達している一方で、顧客の95%が米国内にいることが分かっています。海外からの商品は全てカリフォルニアのロングビーチ港に到着しますが、その一部をパナマ運河経由ニュージャージー港に移行できるか評価したいと考えました。新たな港の利用によって、荷量の分割や複数の業者が必要になることから、コストが増加するかもしれません。一方、現行ではロングビーチ港でのリードタイムの遅れによって在庫切れや売上損失が生じる可能性があり、さらに、補充、需要特性、各店舗への配送コストを含めトータルで陸揚げコストを考えたところ、コストの全体像が変わりました。代替の調達シナリオを検証した結果、ニュージャージー港の利用によって総コストを軽減しつつ、在庫切れや売上損失のリスクも抑えられることが分かり、その小売チェーンはニュージャージー港の追加を決めました。

感度分析を利用して、オフショア生産を評価したハイテク企業

あるハイテク企業は設立当初から15年間、中国沿岸部の製造施設に生産を委託してきました。ある時、その中国のメーカーから、低コスト維持のため内陸部の製造施設への移転が必要だとの申し入れがあったため、ハイテク企業は別の調達シナリオを詳細に検討することにしました。内陸に移転すれば人件費の削減が見込まれますが、リードタイムや輸送距離は逆に増加するでしょう。そして言うまでもなく、内陸に移転したとしても、今後、人件費が高騰しないという保証はありません。その企業は、「現行のオフショア生産が、調達判断としてどの時点で適切でなくなるか」を考えました。人件費のみならず、燃料費、税金や関税も考慮して感度分析を行った結果、現在の中国での生産に対し、中南米やメキシコといった他の調達地域が有利であることを正確に評価することができました。

 

3. 迅速な対応: 予想外の事態にどう対応すべき?

その時々の最大リスクを反映した様々なシナリオで最適化ができていれば、予想外の事態や次に起こる自然災害への準備は整います。予想外の事態が生じても、それをシナリオに追加するだけで、迅速かつ賢明な対応ができるようになります。

さらにシミュレーションを活用して、想定外の事態への様々な対応策を検証することが可能です。

  •  サプライチェーンのモデルを使い、緊急対策を評価
  •  需要の変化に対し、生産と調達のバランスを確保
  •  供給不足時の需要の優先付け
  •  費用想定の不成立が生じた際の再構築

 

洪水発生後、顧客に速やかに代替製品を提供したハードドライブメーカー

現行のサプライチェーンを可視化し、最大リスクを反映したシナリオで最適化できていれば、予想外の事態が生じた場合にも迅速な対応が可能になります。あるハードドライブメーカーは、こうしたモデルを構築し、陸揚げコストを低く維持する最善の方法を評価していました。ある時、大規模な洪水が発生して主要サプライヤーの操業が停止し、数週間は復旧できない状況となりました。そのメーカーは、全顧客に対応可能な予備在庫を確保していたため、直ちに現行のサプライチェーンモデルを利用して複数のシナリオ実行し、リードタイムを考慮した予備在庫切れの時期と、最適な代替手段を検討しました。メーカーは代替製品を迅速に顧客に提供し、不確実性を回避し、納期の遅れの長期化を避けることができました。

 

おわりに

かつて、リスク管理計画のサイクルは(あるとしたら)2‐3年に一度でした。しかし現在、ビジネス環境は一夜にして変わってしまうことがあり、企業は計画や対応の時期を先延ばししている余裕はありません。コスト、サービス、複雑性、リスクのバランスを適切に確保できなければ、競争力を失い、ビジネスを継続できなくなるでしょう。

モデル化テクニックの活用により、企業はエンドツーエンドの現行モデルを構築し、現行のサプライチェーンを可視化し、最大のリスク要因に基づきシナリオを検討することができます。そして、予想外の事態でも迅速に対応ができるようになります。適切なサプライチェーンの設計は、真に効果的なリスク管理の戦略基盤となり、市場がどのような状況になっても、自然が何を引き起こそうと、競争優位の持続が可能になります。