ラマソフト・サプライチェーン・ブログ

サプライチェーンデザインが注目されるようになった理由

By LLamasoft  February 6, 2019

こんにちは、ラマソフトでGroup Vice President, Industry Strategy Operationalを担当しているマドハブ・ダーバ(Dr. Madhav Durbha)です私が仕事を始めて間もない頃、サプライチェーンデザインという分野はまだ世に出てきたばかりで、年に一度行うか行わないかという業務でした。需要や全体のビジネス目標をサポートするため、企業はプロジェクトを計画して、サプライヤー、工場、物流センター、配送ポイントからなるネットワークがどのように機能しているかを評価していたものです。サプライチェーンデザインという取り組みは、先にデザインに対する意思決定、ポリシー構築、製品フロー決定、資本経費の意思決定などが行われた後で、サプライチェーンデザインのプロジェクトは翌年もしくはプロジェクト自体を再検討されるまで棚上げされてしまうという状態でした。しかし近年は、サプライチェーンデザインの頻度がかなり増え、継続的に実践するようになっているという顕著な変化が見受けられます。こうした変化に影響をもたらしている要因の一例をご紹介します。

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  1. 動的サプライチェーンの拡大:デジタルテクノロジーやアプリ経済の高まりにより、消費者は指先の操作ひとつでかつてないほど膨大な量の情報にアクセスできるようになりました。力を手にした消費者は、「計画ー調達ー生産ー配送」という連鎖の「受け取る側」でただじっとしているだけではなくなり、代わりにそれぞれのブランドオーナーのバリューネットワークの中心的存在になり、これまで以上に選択肢も増えたのです!デジタルテクノロジーのおかげで、ブランドオーナーや小売業者も従来よりはるかに多くの手段を使うことが可能になり、ダイナミックプライシング(価格変動制)、顧客個人それぞれの個別の関心や好みに基づいたオファー、直送やBOPIS(オンラインで購入し店舗で受け取る方法)といったオーダーメイドのフルフィルメントオプションなどにより消費者と関わりあうことができます。これは同様に、ネットワークでのモノの流し方という観点において、たとえ短時間におけるネットワークノード自体が比較的安定しているとしても、企業は今よりはるかに迅速に対応することが求められることになります。 デザインやポリシーの意思決定を年に1回程度で行うのではなく、むしろ、継続的に見直しを行わないと、すぐに古いものになってしまいます。
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  2. 記録的なM &A取引:2018年11月までに成立しているM&A取引額は3兆3,000億米ドルで、過去最高を記録しています!株価が過去最高値に近い水準に達し金利も比較的抑えられいる今、取引は活発化の一途にあり、一部の企業は買収ブームに沸きはじめています。たとえM&A前の2つの企業が最高のネットワークを所持していたとしても、それらを統合すると、ほとんどの場合サプライチェーンは事業目標という観点から見て“準”最適なものになってしまいます。従って、M&A精査の一環として、企業はひとつのネットワークをベースラインとしてモデル化し、その後、資本投資を考慮しつつランデッド・コスト(Landed Cost)のバランスを取りながらサービスレベルを最適化するといった、さまざまな事業目標を考慮に入れた上で、ネットワークを全体的に最適化する必要があります。十分に詳細なコストのモデル化で、企業は相乗効果を明確に特定できるだけでなく、財政的にも経営的にもその相乗効果を数値化することができます。そのような分析は、近年になって登場したパワフルなシミュレーション機能や最適化機能を活用することにより数日あるいは数週間で行うことが可能になりました。
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  3. ナショナリズムとプロテクショニズム(保護主義)の高まり:NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉、北米と中国における貿易戦争の激化、Brexit(英国のEU離脱)はごく最近の出来事であり、現時点ではその完全な影響をまだ知り得ることはできません。ハーレー・ダビッドソンは、欧州向けの生産のかなりの部分を、北米から欧州に移すと発表しました。バイク製造のために輸入している鋼鉄やアルミニウムといった原材料にかけられる関税、また欧州各国へ完成したバイクを輸出する際にかけられる関税により、二重で打撃を受けています。また、まったく異なる業界の話題として、ウォールストリートジャーナルは、中国の豚精肉業者が米国からの豚の調達を著しく減らしていることにより、スペインおよび南米の養豚場が生産を拡大させているというレポートを掲載。こうした要因が、ネットワークフローに極めて重大な変化を引き起こしています。現在これらの変化の多くは、米国と中国の外交関係の展開に応じて限られた範囲に抑えられていますが、多くの大手企業はサプライチェーンネットワーク周辺のあらゆる不測の事態を想定するためにさまざまなシナリオを実行し、より頻繁に広範囲でデザインの実践を進めています。
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  4. クラウドコンピューティングの台頭:これまで、サプライチェーンデザインは完全にユーザーのデスクトップ上で行われてきました。しかし前述のような要因により、企業は今、数多くのシナリオを実行し継続的にトレードオフを評価することが必要であると気づき始めています。クラウドコンピューティングの台頭のおかげで、プランナーはこれまでには想像すらできなかったスケールで複数のシナリオを同時並行で実行することが可能なクラウド環境でたくさんのシナリオを展開することができ、意思決定の速度もかなり加速しています。
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  5. デザインとプランニングの調和(融合):デザインとプランニングの間に存在していた人為的境界は著しくぼやけはじめています。特にデザインの要素をプランニングプロセスに取り入れている、より成熟した企業においてはその傾向が顕著に表れています。計画系アプリケーションの本質的な限界の一つに、サプライチェーンに関わる意思決定のための推進要因であるポリシーの一部が変更できないことが挙げられます。例えば、ある製品(の材料)を、一次供給元、二次供給元、三次供給元という形で3つ別々の工場から調達するとします。プランナーは通常、この優先度をハード制約として受け入れ、需要と供給のバランスをとるために最善を尽くします。しかし、デザインはこの前提を疑い、トータル・ランデッド・コスト(Total Landed Cost)の観点からソーシング制約を再検討します。他の例としては、見込み生産の上限、最小注文量、複数注文などがあげられます。例えるならば、プランニングは「今あるカードを最大限に活かす」もので、デザインは「手持ちのカードを一新し、その中から最も良いカードで勝負する」というものと言えます。プレイヤーであると同時にディーラーでもあるというのは、有効な戦略になり得ます!言うまでもありませんが、デジタル世界でのアジリティ(敏捷性)は、現実世界での妥当なレスポンス性(反応の速さ)に一致させる必要がありますが。
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  6. 新しいスーパーヒーローであるサプライチェーンデザインの専門家:デザインは、その生来の特徴として、サプライチェーンをエンドツーエンド(End-to-End)の視点でとらえ、従来のプランニングの調達、製造、配送におけるサイロ化を解消します。デザインの専門家は、エンドツーエンド(End-to-End)ネットワークを考慮しつつ、包括的な思考ができる人でなければなりません。先日、北米の大手自動車メーカーを訪問しました。デザインのCoE(センター・オブ・エクセレンス)を担当するサプライチェーンのリーダーによると、彼のチームは、デザインに直接起因している純利益として何千万ドルにも値する意思決定や、デザインによって影響を受けるプランニングの意思決定を行っているとのことでした。彼らは今や、社内で戦略とプロセスのエキスパートとして見なされています!デザインチームは、固定費、変動費、準固定費等、エンドツーエンド(End-to-End)ネットワークのすべての詳細をモデル化しているため、経営陣に総サプライチェーンコストのデータを提供するにあたり最も適した人々です。彼らは、プロセスの中にさまざまなシナリオやシミュレーションを実行することができるネットワークのデジタルツインを構築しています。企業のためになる専門知識を確実に深めつつ、そのプロセスにおいて専門家としての大きな成功を楽しんでいます。さらに、効率的なサプライチェーンデザインを通して、世界をよりサステイナブルで住みやすくすることに貢献しています!

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上記の要因により、サプライチェーンデザインは「1回きりのプロジェクトで終わってしまう取り組み」から、「デザイン原理に基づき継続的に実践するオペレーション」へと移行しています。業界をリードする企業は、デザインという原理こそが、計画(planning)や実行(execution)の基盤となることに気づき始めています。

 

 

 

 


 

[参考資料]

  • [ラマソフト・グローバルリサーチレポート]
    The End Of Globalization?: 
    グローバル製造業サプライチェーンの脅威となる経済ナショナリズム
    ラマソフトは、アジア、欧州、北米、南米を対象に、グローバルな製造企業がどのようにディスラプションからサプライチェーンを保護しているか調査を実施しました。本リサーチレポートで、経済的ディスラプションが製造業サプライチェーンに及ぼす影響や、最新トレンド、将来の課題を読み解きます。
  • ラマソフト・サプライチェーンデザイン・ツールキット
    サプライチェーンデザインのプロジェクトを初めて検討する方のために、サプライチェーンデザインとは?という基本コンセプトと、サプライチェーンデザインのプロジェクトをスムーズに立ち上げ成功に導くためのプロジェクト実施前の準備についてステップ・バイ・ステップで説明します。

 

その他参考資料は弊社Webサイトにて公開しています。
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